国際会議で発表する

このページではアクセシビリティ(Accesibility)、支援技術(Assistive Technology)分野で国際会議に投稿する場合、どこに投稿すべきかを検討するための情報提供を目的としており、AAC014オーガナイズドセッション「Assistive and Accessible Computing ~研究成果を世界に発信しよう~」(リンク先に発表資料があります)での議論を基に編集をしています。あくまでアクセシビリティ研究会運営委員個人による意見となっておりますこと、ご注意ください。

国内会議、研究会はこれまで経験あるのですが、国際会議で発表する場合、どの会議で発表すればよいのでしょうか?
大変素晴らしい心意気ですね。まずは指導教員に相談してみましょう。その上で障害支援や支援技術等は、ACM ASSETSACM CHI等のトップカンファレンスへの投稿を目指しましょう。
トップカンファレンスってなんですか?
世界の中で最も権威があり、且つ採録の難易度も高い国際会議のことです。
なるほど。でも国際発表は初めてなのでいきなりトップカンファレンスは自信がありません。。
トップカンファレンスで発表することは、多くの注目を集めるだけでなく、当該分野トップの研究者との情報交換・交流ができます。積極的にトップカンファレンスに挑戦し続けることを意識しましょうね。
わかりました。でもトップカンファレンスに落ちたらまた別のカンファレンスに投稿する手間があるので、最初から通りやすいところを狙いたいです。
その気持も十分わかります。ですが、トップカンファレンスは採択されなくても、そこでの査読結果が非常に有益です。第一線の研究者による濃密な査読コメントが帰ってきます。一度落ちてもこれらのコメントから研究をブラッシュアップして、2度、3度と挑戦し続けましょう。

はい、わかりました。ところでASSETSやCHI以外にもアクセシビリティ分野を扱う国際会議は他にもありますか?
もちろんたくさんあります。UI分野ではUIST、協調作業系ではCSCW、ウェブ技術ではWeb4All、ロボット技術系ではHRI等がよく知られており、アクセシビリティや支援技術に関するセッションがあります。

ありがとうございます。教えていただいた会議に投稿することを考えつつ、私は国際会議未経験なので、まずはとにかく参加してみたいのですが、初心者でも参加しやすい会議等はないでしょうか?
より多くの人が発表できるよう、門戸を広げてくれている国際会議としては、HCII, ICCHP, AAATE, CSUN等が良いかもしれません。
ありがとうございました!トップカンファレンスへの投稿を目標としつつ、自分の研究進捗スケジュールに合う国際会議に投稿しようと思います。

発表カテゴリー

あの、
どうしました?
投稿の準備を始めたのですが、なんだかいろいろな発表形態があるみたいで、どれに投稿したらよいのかわかりませんでした。
発表カテゴリのことですね。国内会議でもそうですが、国際会議でも大きく分けて、一定の完結がある研究と、まだ途中の研究を受け付けるカテゴリがあります。前者はpapers等と呼ばれ、後者は posterやlate-breaking等様々な言い方がされています。
一定の完結って具体的にはどのような研究ですか?
例えば実験系では、仮説に基づいて実験を行い、その結果から従来の研究にはなかった新たな知見を発見した。といった一連の研究成果を収めた研究のことを指しています。
私の場合はまだ予備実験とその結果をまとめたところなので、後者になるかなと思います。poster等の場合もトップカンファレンスでは採択率は低いのでしょうか?
一概には言えませんが、papersカテゴリと比較すると、poster等は採択率が高いと言えます。とはいえ、研究者として目指すべきはpapersカテゴリといったいわゆるFull Paperを通すことですので、posterの次はFull Paperを目指すといった流れを意識してくださいね。
わかりました。ありがとうございます。もう一つお聞きしたいのですが、ASSETSにはshort paperというカテゴリがありますが、これもposterやlate-breaking等の完結していない論文投稿と考えてよいでしょうか?

 

ASSETSのshort paperカテゴリは、発表時間が半分、フルペーパーの10ページに対して5ページの枠で完結した研究の発表です。フルペーパー程の研究ボリュームはないけれど、研究としては完結している場合はこちらの投稿を検討するとよいでしょう。
ありがとうございました。またなにかわからないことがあれば質問させていただきます。

このページで紹介された国際会議

開催時期と締め切り時期を載せていますが、将来の会議では変わる可能性があるので、それぞれのWebページで確認してください。

  • ACM ASSETS
    • 障害支援系に特化した国際会議です。情報技術を利用した障害支援分野のトップカンファレンスの一つといえます。
    • 開催時期:10月後半、フルペーパー締め切り時期:4月終わり〜5月初め
    • 採択率:2020年 46/167 (28%)
  • ACM CHI
    • コンピュータヒューマンインタラクション(CHI)全般を扱う国際会議ですが、毎年アクセシビリティに関するセッションが設けられています。CHIはデザインやインタラクション技術、ユーザ評価等など、多様な領域を含むため、参加者や発表件数が非常に多いのが特徴です。CHI, HCI分野全体のトップカンファレンスとして広く認知されています。
    • 開催時期:5月初め、フルペーパー締め切り時期:9月中旬
    • 採択率:2020年 758/3126 (24.3%)
  • ACM UIST
    • CHI, HCI分野の中でもインタフェース、インタラクション技術に特化した国際会議です。
    • 開催時期:10月後半、フルペーパー締め切り時期:4月終わり〜5月初め
    • 採択率:2020年 97/450 (21.6%)
  • ACM CSCW
    • 協調作業(複数人が協力して行う作業)に特化した国際会議です。
    • 開催時期:10月後半、フルペーパー締め切り時期:年3回(詳細はWebページ参照)
    • 採択率:2019年 703/2958 (24%)
  • ACM/IEEE HRI
    • 人とロボットのインタラクションをテーマにした会議。福祉や健康のためのロボットも対象。
    • 開催時期:3月後半、フルペーパー締め切り時期:10月初旬
    • 採択率:66/279 (23.6%)
  • Web4All
    • ウェブアクセシビリティが主なテーマで、デジタルアクセシビリティ、ユニバーサルアクセシビリティのテーマであれば採録の可能性があります。親会議のWWWは採択率15%のWebに関するトップカンファレンス。
    • 開催時期:4月中旬、フルペーパー締め切り時期:1月中旬
    • 採択率:30~60%、年による
  • HCII
    • HCI分野の幅広い研究が発表される。要旨(abstract)で採録可否が決まる。
    • 開催時期:7月後半、ペーパー締め切り時期:11月
  • ICCHP
    • 偶数年開催。HCI分野の幅広い研究が発表される。
    • 開催時期:9月、ペーパー締め切り時期:4月
    • 採択率:〜50%
  • AAATE
    • 奇数年開催。アシスティブテクノロジーがテーマの会議。
    • 開催時期:8~9月、ペーパー締め切り時期:
  • CSUN
    • アシスティブテクノロジーがテーマの会議。支援機器の展示が有名。
    • 開催時期:3月、ペーパー締め切り時期:9月